*本記事は依頼を受けて作成した広告企画です。
今年の春先、高校演劇の関係で知り合った友人の河口円(DOORプロデューサー)と30年ぶりに会った。驚くことに彼女は演劇活動を今でも続けていて、秋に公演をするという。私は観ることさえも遠ざかっていた演劇に、古い友人がいまだ現役だなんて、嬉しいし感激したし、そりゃもう絶対観に行くぞうと思っていたら、なんと次の公演の紹介文を書いて欲しいと依頼されてしまった。
わたくし、まだまだ駆け出しのライターですけどいいんですか…と、恐縮しつつ、2016年公演の映像を観させていただく。
ふむふむ「アラサー以上の女性の明日がほんの少しだけ元気になってほしい」というコンセプトですと…?こちとら、ちょっとやそっとじゃ元気にならない、ガッチガチのアラフィフでございますわよ、どんなものやらお手並み拝見……と観ましたならば、はい、降参降参!
いやー、いいお芝居を観させていただきました!
これは元気になるわ効きますわ、よろしいですわ。
物語の舞台は小料理屋、花たちばな。主人公・真弓の元へ、「あなたのお父さんはヒーローやったんです」と、とある女性が訪ねて来る。女性は亡き自分の母から預かった封筒を受け取って欲しいと。また、自分の母がどのように助けてもらったのかを知りたがる。しかし娘の真弓が覚えている父はヒーローどころか頼りなく飲んだくれていた姿ばかり。父と幼なじみである、花たちばなの店主ナミと話をしながら、昔の父をひもといてみると……。
軽妙な会話に現代と過去の再現シーンがバランスよく流れ、ダメダメな酒飲みエピソードと共に、お父さんの秘密が徐々に明らかになっていく。
映像で観ても、息ぴったりな熱演が伝わるほど。お父さん=まこっちゃんは、「そうそう、こんな感じの、厚かましいけど憎めなくて、人当たりが良いおせっかいな人、昔はぎょうさんおったおった!」と言いたくなるリアルなキャラ。
幼なじみのナミさんの姉御肌なところも好ましい。主人公やその他の登場人物にも、それぞれ感情移入できるポイントがあって、自分ごとのように、ストーリーが染み込んでくる。
テンポのいいセリフ回しに、大阪らしいけどクドくない小ネタギャグが心地いい。クドくない笑いの匙加減って、とっても難しいんですよね。これはめちゃ高レベルな演出ですぞ。果たしてどんな厳しい稽古をしているのか検証すべく、我々はDOORの稽古場へ飛んだ(昭和的表現)。
千林大宮のアーケード商店街を進んだ路地の奥に、ぽつんと灯る明かりにほっとする。レトロなビルの2階、演劇稽古場サウザンド。
狭くて急な階段を上がると、読み合わせの真っ最中。よく張る、ええ声が響いていた。キリのいいところでご挨拶。人見知りだったことを今さらながらに思い出した私は、がちがちに緊張してしまったものの、皆さん、とってもあたたかく迎えてくれた。中でも気さくだったのは演出の虎本さん。
「今日の稽古はシリアスなシーンやけど、気にせずシャッターを切ってくださいね!」と声をかけてくださる。演者の方々も「3行前まではにぎやか(なシーン)やってんけどなー」とくだけてくださり、肩の力が抜けた。
しかし稽古が再開すると空気が変わり、皆さん役に入り込む。
おお、ビデオで見た、まこっちゃんがそこにいる…。
やっぱり、生身の人間が目の前にいるというのは、すごいインパクト。今回、初参加の方も、もう台本は持たずに稽古されていて、さすが。本日はパート稽古ということで、場面ごとに小休止が入る。
「さっきのセリフは二の句を継げさせずに…」「そこの小道具はもう少し観客のほうに向けて…」など、演出の虎本剛さんが的確な指示を出し、役者たちもすぐに応える。
磨きあげ、完成度を高める真剣勝負な稽古だが、主役の早川さんが隙を見つけて変顔を披露したり突っ込みを入れたりなどもありつつ、楽しみながら稽古に励んでおられた。
久々に見た芝居作りの現場は、演劇をしていた頃を思い出し、少しだけ切なくなった。けれど、それよりも本番への期待のほうが大きく膨らむ、役者たちが生き生きしている稽古場だった。
少しだけお時間をいただき、皆さんにインタビューさせてもらう。
葱山
「前回の公演の千秋楽では、どんなことを思われましたか?」
是常祐美さん
「すごく不思議な作品で、作品自体の力がものすごく強くて、そこの世界にいられたら、感情が勝手につれていってもらえるというか…そういう役者としてもすごく不思議な体験だったし、自分でああしようこうしよう、というよりは、自然とそうなっていったという、作品そのものの力を借りてやったな、という感じでした」
葱山
「以前、公演された時、『やりきったなー』と『もっと続いてほしい』だったら、どちらの気持ちが大きかったですか?」
小川十紀子さん
「それは……両方……(一同笑)」
早川丈二さん
「だいたい、いつも、どんなお芝居でもやっぱり最後は名残惜しいのと…達成感じゃないですけど、最後まで行ったという気持ちが入り交じるのはそうですね。
サイクロンの時は前の年に母親を亡くしてまして、そういうのが、僕の中ではリンクしたというか、そういう大事な作品ではあったので、正直、もっとできたのではないかとか、いろいろ考えるんですけれども……劇場の空気感がとても良かったので、このまま終わるのも嫌だなと思ったり、早くビール飲みたいな、とも思ったり(一同笑)」
是常
「お客様も徐々に増えていったので、再演したいねって、その時も(話が)出てたよね」
早川
「そうそう」
葱山
「今回、オーディションを受けたきっかけは?」
谷野まりえさん
「年齢が上がると受けられるオーディションが、そんなにないので……(一同笑)……ってのもありますが(笑)、私が知ってる、楽しそうなメンバーばっかりだったので、参加してみたいなあと思い、ふわっと応募しました(笑)」
鄭梨花さん
「前に観劇三昧で見て、募集の年齢でいけるかなーっていうのと(「君もか」と一同笑)、単純に共演したかった、というのがあったので応募しました」
葱山
「今回、特に見てほしいところはありますか?」
虎本剛さん
「そうですね、初演と変えてるところも多少あるんですよ、(細かいので)ちゃんと見極めないとわからないですけど、それは何か僕の中で、でこぼこしているところをより綺麗にしようとする、初演が持っていたエネルギーを生かしながら、この新しいメンバーで作っていくという、より精度の高まったところで見てほしいなと思っているんですけども」
虎本
「僕はシンプルに笑って泣ける作品やと思うんですよ。笑って泣ける作品って、世の中にたくさんあると思うんですけど、もうその中でも恐ろしい濃度で笑って泣ける作品に仕上がっていますから、そこを見てほしいというのと。初演の時と今の間にコロナ禍を挟んだんですけど、この作品の根幹にあるテーマで人の話を聞くというゲートキーパーというのが…共感するとか、受け止める・受容する、というのがあって、それがより世の中に求められるようになっている気が、僕の中でしているんです」
虎本
「(例えば)SNSで発した一言で大きく炎上したりであるとか、不祥事があったときに過剰に反応されるとか、世の中が分断されるとか…っていうことにおいて、何か目の前の人と同じ目の高さで、同じ温度感で話を聞くということが、この作品の中に込められているので、それを感じ取ってもらえたら、いいなと思っています」
突然の質問だったにも関わらず、脚本・演出の虎本さんの言葉は、明確で力強く、心に響きました。すごい!さすがです!
他のみなさんも、こころよくお答えくださり、本当にありがとうございました!
稽古を見学させてもらい、公演がますます楽しみになったぞう!
そうだ、昔の演劇友達を誘って観に行こう。そんでもって観劇後は飲み会だ。観た後のお酒は絶対においしいに決まってる。なぜならこの作品、実は一升瓶が大事な脇役。
でも、私はすぐには気がつかず、公演のビデオを観て、しばらく経ってから「一升瓶を抱えて……まこっちゃん……めっちゃ幸せやったんやろうなー」って、遅れて答え合わせが完了しまして、後から、うわああっ!と感動がよみがえるという、ええ経験をさせてもらいました。
なんのこっちゃわからないでしょうが、この意味は観たらわかりますので。
(ネタバレはしてません!)
ぜひ、ご自分の目で耳で体で確認して、風圧高いお芝居にここちよく、心あおられてくださいませ!
DOORプロデュース 11周年公演
作・演出:虎本剛(ステージタイガー)
◾️日程 全9ステージ
2024年
9月19日(木) 19:00
9月20日(金) 15:00・19:00
9月21日(土) 13:00・17:00
9月22日(日) 13:00・17:00
9月23日(月祝) 13:00・17:00
*開場は開演の30分前
*受付開始は開演の45分前
◾️会場 【SPACE9】 〒545-8545 大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43
あべのハルカス近鉄本店ウイング館9階
■出演
早川丈二(MousePiece-ree)
小川十紀子(遊気舍)
是常祐美(シバイシマイ)
谷野まりえ
鄭梨花
■スタッフ 作・演出:虎本剛(ステージタイガー)
舞台監督:西野真梨子
照明:渡辺佳奈
音響:廣岡美祐
宣伝美術:堀川高志(kutowans studio)
制作:宮川あきえ(campana)
プロデューサー:河口円(DOOR)